2004年08月25日

愛があるなら耐えられる?「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」

jutem「女として扱ってほしい」なんてセリフを聞くと、「良い友達」とか「妹みたい」で終わってしまうタイプの女の子の悩みだと思ってしまうけど、この映画は違う。

ゴミの運搬屋をしているクラスキーとバドヴァンはゲイカップル。ある日、二人は町外れのドライブインで少年のような娘ジョニーに出会う。

クラスキーはジョニーの美少年のような姿に興味をもち、またジョニーもハンサムなクラスキーに一目で魅かれる。
そして、次第に二人はバドヴァンの嫉妬も気にせず、愛し合うようになるのだった。

しかし、二人にはどうしても越えられないものがあった。
ゲイのクラスキーは、どうしてもジョニーを女として扱うことができない、つまり抱くことが出来ないのだ。
それでもクラスキーを愛するジョニーは「私を男と思って!」とうつぶせになって身体を差し出す。

やせっぽちの肢体で苦しさに耐え、あまりの痛みに泣き叫びながらも彼を受け入れるジョニー。

耐えることで、うまくいっているかのように見えた二人だが、ジョニーの一言でクラスキーは元の恋人バドヴァンのもとに戻っていってしまう。

「違うの!そんなことを言いたかったわけじゃないの!」という泣き崩れるジョニー。

同性愛って?
異性愛って?
どうして、好きなだけじゃダメなのか、性別を越えられないのか。
なんだか、見終わったあと、そんなことばかり考えてしまった。
でも、それは生理的に分かっている、それこそ身体の奥で。

愛されたい、愛されたい、女のとして愛されたい。

いたるところでジョニーの気持ちが痛いほど伝わってきて、見ていて痛々しい。
でも、耐える姿が悲しいくらい美しくて可憐だった。


それにしても、このときのジョニー演じるジェーン・バーキンは、本当に中性的で魅力的だ。

冷めた瞳とはうらはらに、真っ赤に熟れた蠱惑的な唇。
手足がひょろ長くて華奢な身体なのに、ときどき見せる伏し目がちな表情にドキッとさせられる。

特にジョニーとクラスキーが初めて出会うシーン!
鉄タンクごしにクラスキーを見つめるジョニーの熱っぽい視線と半開きの口元には、グッとくるものがある。

ところで、この映画、ミュージシャンであり俳優でもあるセルジュ・ゲンズブールが、妻ジェーン・バーキンを主演に監督デビューした作品なわけだけど、もともと、この映画って、ブリジット・バルドーセルジュが不倫中に作られた曲のタイトルなのよね。

ブリジットのダンナが怒って、アルバムからは「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」だけが削除されたからブリジットが歌う、この曲は世に送り出されてはいないのだけど。

「もう二度とこの歌は歌わない」と約束したのに、セルジュはその1年後にジェーン・バーキンと「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」を吹き込んじゃって、その後さらに映画にまでしちゃったわけです。

ちなみに、この映画でのジェーンは、ベリーショートなのだけど、これはカツラだったらしい。細かく三つ編みをあみこむようにして、その上にカツラをかぶせたのだそうな。

最初は切るのを嫌がってたジェーンも、最後は切ってもいいって言ったらしいのだけど、今度はセルジュが反対したんだって。自分の映画のイメージと同じジェーンが他の所で見られるのがイヤだったんだろうね、ってことになっている。

その気持ち、分からないでもない。
だって、本当にキレイ過ぎるほどキレイなんだもの、ジェーン


監督:セルジュ・ゲンスブール
出演:ジェーン・バーキン ジョー・ダレッサンドロ


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注意! ネタばれ含みます。 1975年作 監督 セルジュ・ゲンズブール  出演 ジェーン・バーキン 私のマル秘ノートによりますと、’98.11.5、銀座シネパトスにて、ゲンズブール・セレクション特集で観ました。 ジェーン・バーキンは故セルジュ・ゲンズブールの...
『ジュ・テーム・モア・ノン・ブリュ』【ぺぺのつぶやき】at 2004年12月14日 01:48
この記事へのコメント
わたしもコレ、すっごく好きな映画。

イントロで流れるビアノの軽い感じが好きだったし、アメリカちっくでだけど色のとんだようなセットが下品じゃなくてよかったなぁ。

そしてやっぱり、ジェーンだよね。
なんて魅力的なんだー。

セルジュ・ゲンズブールが監督したものでは「 スタン・ザ・フラッシャー」もよかったよ〜
Posted by junko at 2004年09月26日 01:00
そうなんだよね〜、くすんだ背景がまた良いの。
ジェーンが際立って光り輝いて見える。

「 スタン・ザ・フラッシャー」は見たことないや〜。
チェックしてみるよ!
Posted by モがジョ at 2004年09月27日 23:11
はじめまして。この映画のことを取り上げてあり、しかも私が好きな映画のジャンルが多いので書き込みしました。
ジェーンの髪はカツラだったなんて、しりませんでした。
「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」の歌ってそんな事情があったのですね!
私もBlogにこの映画のことを書いたのですが、あのカップルはゴミ運搬屋だったのですね、何年も前に1回観たきりで、よく思い出せなかったので、トラックの運転手と書いてしまいました。
でも、この映画って何年経っても色褪せないです。ジェーン・バーキンの唇だとか今でも強烈なイメージが残っています。
その記事です。↓
http://blog.drecom.jp/pepe_hello/archive/35
Posted by ペペ山田 at 2004年11月19日 01:15
はじめまして〜。

ぺぺさんのサイト、拝見しましたよー。
ステキなサイトですね!

私もこの映画、実は数年前に1回みたきりなんです。
でも、あまりにも衝撃的だったので、いろんなシーンを鮮明に覚えている。。

ゲイの二人が洋式トイレを処分しているときに「女はこんなのでションベンするんだぜ、ゲーッ」とか言ってるシーンなんかも、しっかり覚えてます。。

そう、本当に何年たっても色あせない映画ですよね〜。
Posted by モガジョ at 2004年12月13日 23:26
私のサイトのほうにまで、書き込みありがとうございます。

昔、この映画のチラシを見たら、衝動的に観に行きたくなったのです。
公開当時は、芸術性が高すぎたせいで、ほとんどヒットしなかったという、気の毒な映画だそうです。
でも、本当にいい映画は何年経ってもいいですよね。
Posted by ペペ山田 at 2004年12月14日 01:46